順天堂医院での研修でゲストスピーカーとして話をしてきました
レインボーコミュニティ西東京(以下「当団体」と言います)のメンバーが、順天堂医院であったSOGI(Sexual Orientation and Gender Identity、性的指向/性自認)をめぐる患者・家族・職員への配慮と対応についての研修に、ゲストスピーカーとして招かれ、LGBT当事者としての立場から話をしてきました。当団体からは複数のメンバーが、数度に渡っての研修に参加し、お話をしてきましたが、ここでは2021/9/22に当団体メンバーのJOEがお話をしてきた回について、JOEがお話をしたことを中心に、簡単にレポートします。
研修は順天堂大学医学部の武田裕子教授の主催で行われ、当日は、医事課やサービス課、看護部職員、看護師を中心とした皆さんにお集まりいただきました。順天堂医院では、LGBTに対する理解を深め、SOGIにより困難を抱える方に受診しやすい病院を目指して、有志が研修を通じて実態を学び、医療や医事対応に活かしたいとのことでした。研修にあたり、事前にSOGIについての事項で正誤を問う簡単なアンケートを行い、また、視聴必須のニュース番組と任意のEテレ番組を見てきたうえで、ざっくばらんな話をする、という形式です。
LGBT当事者として当日はウィル訪問看護ステーション江戸川の理学療法士 中西さん、当団体JOE、他1名の方の計3名がゲストスピーカーとして参加し、個人的・社会的体験や、それらの体験から感じていることを、参加者の皆さんにお話しました。
当団体のJOEからは、自らが癌に罹患して2度手術を受け、その際、入院に先立って権利保護のために、パートナーであり当団体メンバーであるけんぼーと、パートナーシップに関する公正証書を作成した経験*から、まずお話いたしました。
法的な結婚であれば、役所への届けにかかる手数料が数百円×2で済むところ、公正証書の作成には20数万円かかったこと(注:後見人契約を含む)、結婚では自動的に認められても、私的契約である公正証書作成ではカバーできない権利があることなどについて、参加者の皆さんは認識あらたにお聞きになっていました。
*パートナーシップに関する公正証書作成について、詳細にご興味のある方は、JOEの個人ブログのこちらの記事をお読みください»
特にパートナーの扱いについては、県や市区町村が導入しているパートナーシップ認証制度を利用していたり公正証書を作成していたりといった人が、病院で病状の説明を受けたり、治療方針について説明を受けたり、手術に同意したり、入院費用の連帯保証人になるといったことについて、権利が認められるべきことはもちろん、パートナーシップ認証制度のない行政区域に住んでいる人、公正証書を作成していない人などが、パートナーが治療を受けるにあたって不便のないよう取り組むべきことの重要性については、熱心な話がありました。当事者の声と、現場の扱いとの違いや、将来に向けてのあり方について、研修参加者は理解を深めることができたように思います。
また、LGBTへの配慮というと、とかくトイレの利用(だれでもトイレ)や服のジェンダーレス化や選択制導入などが話題になりがちですが、確かにトランスジェンダーについてそれらの配慮は重要であるものの、性自認について迷いがなく満足しているゲイやレズビアンについてはあてはまらないこと、入院の受付票や支払い情報の記入について男女別が必要なのか、などということも話にのぼりました。大事なのは、誰のための医療なのかを念頭に、患者さんやパートナーとのやりとりからセンシングするなかで、個々人に合った個別具体的な対応を最適解として導くことであると、参加者は共通認識を持つことができました。
順天堂医院では、将来的にアライ(LGBTの理解者としての存在)が同医院にいて、SOGIについて困難が生じることのないよう、取り組む姿勢があることを対外的に分かるようにしていけたら、との希望もあるとのこと。今回の話を同病院でも広く知らしめ、一層の理解促進に取り組んで行くとのご意向でした。
そして、順天堂医院では、LGBTQsをはじめ患者さんの多様な性のあり方に配慮した院内環境づくりの一環として、2021年5月に有志職員を募りワーキンググループを立ち上げ、「アライ(Ally:LGBTQsなど性的少数者への支援者や理解者であることを示す)」の職員を増やす研修を8月より開始しました。そして、医師や看護師を含め計93名が参加しました。受講者にはアライであることを示すレインボーバッジが交付され、今後、レインボーバッジを付けた職員がいる総合受付には、レインボーフラッグも設置されます。研修会は今後も継続して実施し、外来・入院部門の職員へも参加を広げていく予定です。詳しくは順天堂医院のプレスリリースをご覧ください。
武田裕子教授には、今回のこのレポート掲載にあたり、順天堂医院との協働について、多大なるご協力をいただきました。末筆ながら、御礼申し上げます。